「マスター…?貴方が僕に何をしたか、分かっていますよねぇ?」 は、逆だろう。この状況からいうと。 いつもおかしな奴だが、今日はことさらおかしな奴になっている。 「僕がマスターの家に初めて行ったとき…僕はただ、あなたのために歌うだけだと思っていたのに。 ただの主従関係だと思っていたのに」 「(それだけじゃなくなるのが、こんなにも怖いなんて) 「僕が…僕じゃなくなってしまうみたいでッ…!」 「カイト…?」 「僕は…あなたのこと、 ガクッ オレには、カイトの言葉が最後まで聞こえなかった。 好きなのに、 なのに、 目が覚めたのは、次の朝のことだった。 「気がつきましたか?」 「……ん」 カイト、カイトだ。 いつもの光景…オレの部屋に、カイトがいて。 朝、起きたらカイトがいる、何回も繰り返した光景だ。 「…全く、あれくらいで気絶しないでくださいよね。言いそびれたじゃないですか。 いいですか?もう一度言いますよ。僕は、あなたのこと」 「カイト」 「…?」 きょとん、オレが名前を呼べば、カイトは黙る。そう設定されてはいないのに、いつも決まってカイトはオレを見つめた。 従順なカイト。世界で一番大切な人。 「言わなくても分かってるよ」 空を見上げれば、誰が見ても晴天。雲一つ無い空は、青く広がっている。 *胡桃 |